データ取得日:2026.08.22
小さな学校に通わせたい。そう決めたあとに待っているのは、手続きの話です。転校はどう進むのか。小規模特認校にはいつ・どうやって申し込むのか。卒業したら中学はどうなるのか。
このページでは、いまとは別の学校を、引っ越しも含めて考えている方に向けて、移住して小規模特認校に通うまでの流れを、文部科学省と自治体の資料で整理します。
先に全体の流れを3つ
- 小規模特認校は、国の整理では「その市町村内のどこからでも通える」仕組みです。基本は、その市に住んでから申し込みます(転入予定での申請を認める市もあります=後述の厚木市の例)
- 引っ越しをともなう転校の手続きは、札幌市の例では3つの書類で進みます(書類の名前は市で異なることがあります)
- 今回調べた3つの市の募集は、いずれも秋〜1月に動いていました。定員のある市もあり、時期しだいで入学は翌年度になります。まず移住先候補の市の教育委員会のページを見てください
小規模特認校は「その市に住む」が基本です
まず、勘違いしやすいところからです。小規模特認校は、国の用語解説でこう定義されています。
従来の通学区域は残したままで、特定の学校について、通学区域に関係なく、当該市町村内のどこからでも就学を認めるもの
——文部科学省「よくわかる用語解説(学校選択制・特認校制)」より(2026年8月22日確認)
「通学区域に関係なく」の前に、「当該市町村内の」と付いています。つまり、遠くの市の特認校に、いまの家から通う仕組みではありません。家族でその市に移り住むか、その市の中で住まいを選び直すのが基本です。
「指定校変更」と「区域外就学」——似た言葉の整理
調べていくと、似た制度名が2つ出てきます。根拠の条文が違います。
| 制度 | 根拠 | 何ができるか |
|---|---|---|
| 指定学校の変更 | 学校教育法施行令 第8条 | 同じ市町村の中で、指定された学校を変更する |
| 区域外就学 | 学校教育法施行令 第9条 | 住民登録のある市町村の外の学校に就学する。双方の教育委員会の協議に基づき、受け入れ側の教育委員会が承諾した場合 |
——文部科学省「就学すべき学校の指定の変更や区域外就学について」・神戸市「指定学校の変更・区域外就学」より作成(2026年8月22日確認)
区域外就学は「住んでいる市の外の学校」への道ですが、両方の教育委員会の協議と承諾が必要で、認められるかは事情によります。移住せずに市外の特認校へ通える公式の例は、今回調べた範囲では確認できませんでした。移住を前提に考えるほうが確実です。
引っ越しをともなう転校の手続き
転校の手続きは自治体ごとに案内があります。札幌市の案内では、次の3つの書類が軸になります(福岡市も、転入学通知書と在学証明書等で案内しています。書類の名前は市で異なることがあります)。
- 在学証明書——いま通っている学校からもらう
- 転学児童生徒教科用図書給与証明書——同じく、いまの学校からもらう(教科書を引き継ぐための書類)
- 転入学通知書——引っ越し先の役所で転入届を出すと交付される
この3つを持って、新しい学校で手続きをします。福岡市から転出する場合は、転校予定日の5日前までにいまの学校へ転校の届け出をする、と案内されています。学期の切れ目に合わせるなら、準備はもっと早くから始めることになります。
——札幌市「市立小・中学校の入学・転校等の手続き」・福岡市「小中学校の転入学、転出学の手続き」より(2026年8月22日確認。名称・手順は自治体で異なることがあります)
小規模特認校の入り方を、3つの市で比較する
特認校への入り方は、市によってかなり違います。要件がページに明記されている3つの市を比較します。
| 項目 | 札幌市 | 厚木市(神奈川県) | 豊岡市(兵庫県) |
|---|---|---|---|
| 定員 | 1学年あたり18〜20人(学校による) | 公式ページに記載なし | 各学年若干名 |
| 在住の要件 | 公式ページに明文なし | 市内在住または転入予定(令和9年=2027年3月までの転入予定で申請可) | 保護者・児童がともに市内に居住 |
| 通学 | 公共交通機関または徒歩。保護者の送り迎えは原則禁止。目安は低学年40分・高学年60分以内 | 保護者の責任で通学(早朝預かりあり) | スクールバスなし・保護者責任で概ね1時間以内 |
| 継続 | 1年以上の通年通学に限る | 公式ページに記載なし | 卒業までの継続通学の意思が必要 |
| 募集時期 | 毎年1月10〜20日ころ(年度途中の転入学も可) | 2026年9月28日〜10月23日 | 【受付終了】2026年度入学向けは、申込2025年9月2日〜9月12日/校長面談10月7日〜10月31日/申請書提出10月7日〜11月4日 |
——札幌市・厚木市・豊岡市の小規模特認校の案内より作成(2026年8月22日時点の掲載内容)。日程は年度ごとに変わります。豊岡市の日程は2026年度入学向けに実施されたもので、受付は終了しています。次の年度の日程は、それぞれの市の案内で公表されます
この表から、移住を計画するうえで考えておきたいことを3つ挙げます。
まず、転入前でも申請できる市があることです。厚木市の応募資格には、市内在住に加えて「転入予定」の児童が明記されています。移住と入学を同時に計画できるかは市しだいなので、候補の市に早めに聞く価値があります。
つぎに時期です。今回調べた3つの市の募集は、いずれも秋〜1月に動いていました。日程は年度ごとに変わり、上の表の豊岡市のように受付がすでに終わっていることもあります。検討している市があるなら、いま募集中かどうかを最初に確かめてください。春に動き始めると、次の募集は半年ほど先、ということがあります。
そして通学です。3市とも、通学は家庭側で成り立たせる前提でした。ただし中身は分かれていて、札幌市は送迎が原則禁止(公共交通機関か徒歩)、厚木市・豊岡市は保護者の責任です。住まい選びと通学手段はセットで考えることになります。
こうした学校の中の生活がどうなるかは「複式学級はどう進む? 友だち関係はどうなる?」で、費用の実際の金額は「山村留学の費用はいくら?」で書いています。
卒業したら、中学はどうなるか
特認校に指定されているのが小学校だけ、という市もあります。卒業後の扱いは、今回調べた3つの市では3通りに分かれました。
- 住所地の中学校に戻る(札幌市・義務教育学校を除く):「原則、住所地の通学区域の中学校へ入学」
- 特認校の進学先の中学校を希望できる(厚木市):
この制度を利用して玉川小学校を卒業した方は、玉川小学校の卒業生が進学する指定中学校(玉川中学校・森の里中学校)への就学を希望することができます
——厚木市「小規模特認校制度について」より(2026年8月22日確認)
- どちらかを選べる(豊岡市):
八代小学校の進学先である日高東中学校、または居住地の中学校のいずれかを選択することができます
——豊岡市「2026年度小規模特認校の就学児童募集」より(2026年8月22日確認)
小学校の6年間だけでなく、中学でどの集団に合流するのかまで含めて市の案内を確かめておくと、あとで慌てません。少人数から大人数への合流で子どもが感じることは、「複式学級はどう進む?」の「中学に上がるとき」でも書きました。
移住支援金は、うちも対象になる?
移住そのものには、国の制度があります。内閣官房・内閣府の地方創生の枠組みの「移住支援金」で、公式の案内では、支給額は世帯100万円以内・単身60万円以内。18歳未満の子どもを連れて移住する場合は、子ども1人につき最大100万円が加算されます。
ただし、対象はかなり絞られています。移住する前に東京23区に住んでいた人か、東京圏(東京・埼玉・千葉・神奈川。ただし条件不利地域を除く)から23区へ通勤していた人が対象で、移住直前の10年間で通算5年以上、かつ直前の1年以上はその状態だったことが必要です。
移住先にも条件があります。東京圏の外の道府県か、東京圏の中でも条件不利地域にあたる市町村で、なおかつその市町村が制度を実施していることが必要です。そのうえで、転入後1年以内に申請すること、就業・テレワーク・起業などの要件のいずれかを満たすこと、申請後5年以上住み続ける意思があることが求められます(早く転出した場合の扱いは、申請先の自治体に確認してください)。
——内閣官房・内閣府 地方創生「移住支援金」・「いいかも地方暮らし」制度解説より(2026年8月22日確認)
公式の案内自体に「実施期間、支給額等の制度の詳細は地方公共団体により異なります」とあります。実施していない市町村もあります。「うちは対象になるか」「いくらになるか」は、必ず移住先候補の自治体の窓口で確認してください。
家族で決める前に確かめること
移住×特認校で、市の教育委員会・窓口に確かめること
- 特認校の募集時期と申請の流れ(見学・面談の日程)
- 転入前に申請できるか(転入予定での申請可否)
- 定員と、年度途中の転入ができるか
- 通学の条件(送迎の可否・公共交通機関・時間の目安)と、住まいの場所の候補
- 卒業後の中学はどこになるか(住所地か、特認校の進学先か、選べるか)
- きょうだいがいる場合、下の子の保育園・学童はどうなるか
- 移住支援金の対象になるか(実施の有無・要件・申請期限=転入後1年以内・5年以上住み続ける前提でよいか)
制度の説明より先に、その学校で子どもがどう過ごすかを見たい方は、見学の観点を「学び場を比べるときの確認項目」にまとめています。山村留学と移住のどちらが合うか迷っている段階なら「山村留学・小規模校・移住の違い」から読んでください。
この記事の出典
- 文部科学省「3. 就学すべき学校の指定の変更や区域外就学について」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/shugaku/detail/1422231.htm (取得日:2026-08-22)
- 文部科学省「よくわかる用語解説(学校選択制・特認校制)」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakko-sentaku/06041014/002.htm (取得日:2026-08-22)
- 神戸市「指定学校の変更・区域外就学」
https://www.city.kobe.lg.jp/a80876/kosodate/gakko/school/area/kouku/kuikigai.html (取得日:2026-08-22)
- 札幌市「市立小・中学校の入学・転校等の手続き」
https://www.city.sapporo.jp/kyoiku/suisin/ichiritsugakkou_tetsuduki.html (取得日:2026-08-22)
- 福岡市「小中学校の転入学、転出学の手続き」
https://www.city.fukuoka.lg.jp/kyoiku-iinkai/gakkoshien/life/school-move.html (取得日:2026-08-22)
- 札幌市「小規模特認校」
https://www.city.sapporo.jp/kyoiku/top/tokunin/tokunin.html (取得日:2026-08-22)
- 厚木市「小規模特認校制度について」
https://www.city.atsugi.kanagawa.jp/soshiki/gakumuka/5/2/8581.html (取得日:2026-08-22)
- 豊岡市「2026年度小規模特認校の就学児童募集」
https://www.city.toyooka.lg.jp/kurashi/kyoikugakko/1014250/1027378.html (取得日:2026-08-22)
- 内閣官房・内閣府 地方創生「移住支援金」
https://www.chisou.go.jp/sousei/ijyu_shienkin.html (取得日:2026-08-22)
- 地方創生「いいかも地方暮らし」制度解説
https://www.chisou.go.jp/iikamo/shienkinkaisetsu/index.html (取得日:2026-08-22)
手続き・要件・支援制度は自治体と年度で変わります。実際に動くときは、必ず移住先候補の市町村の最新の案内でご確認ください。
