複式学級はどう進む? 友だち関係はどうなる?——小規模校で教えた先生のリアル

午前の光が差しこむ小さな学校の教室。机と椅子がふたつのまとまりに分かれて並び、窓の外に山なみが見える水彩イラスト 転校・留学・移住

データ取得日:2026.08.20

山村留学や小規模特認校の案内には、「先生の目が行き届く」「一人ひとりが主役になれる」と書いてあります。それは本当です。

ただ、良いことばかりではないはずだ、とも思っているのではないでしょうか。このページでは、案内にはあまり書かれていないことを、勤務した学校で見てきた経験をもとに書きます。

はじめにお伝えしたいこと

  • 書いているのは、小規模校で勤務した経験のある小学校の教員です。ここに出てくる経験談は、すべて勤務した学校で実際に見たことで、全国の小規模校がそうだとは限りません
  • 少人数の学校を勧める記事でも、やめておけという記事でもありません。良い面と大変な面の、どちらもそのまま書きます
  • あわせて、国(文部科学省)が小規模校の良さと課題をどう整理しているかも引用します。個人の経験と国の資料の両方で確かめられるようにしました

少人数校の良い面と大変な面は、別々のものではなく、もとは同じところから来ています。 人間関係が濃いから、支えにもなるし、逃げ場もなくなる。人数が少ないから、全員に出番が回るし、やりたくない役も回ってくる。どちらか片方だけを受け取ることは、たぶんできません。

複式学級は、実際どう進むのか

複式学級とは、2つの学年をあわせて1つの学級にした形です。法律に根拠があります。国の標準では、小学校は2つの学年をあわせて16人以下(1年生を含む場合は8人以下)のときに、複式学級として編制されることがあります。

児童又は生徒の数が著しく少いかその他特別の事情がある場合においては、政令で定めるところにより、数学年の児童又は生徒を一学級に編制することができる。

——公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律 第3条第1項より(e-Gov法令検索・2026年8月20日確認)

学級の種類 1学級の人数の標準
同じ学年でつくる学級(小・中) 35人
2つの学年でつくる学級(小学校) 16人(1年生を含む場合は8人)
2つの学年でつくる学級(中学校) 8人

——同法 第3条第2項の表より作成。この人数を「標準」として、各都道府県の教育委員会が基準を定めます

担任の先生ひとりが、2つの学年を行き来する

私が勤務した学校では、複式学級は基本的に担任の先生ひとりが2つの学年をまわす形でした。朝の会や帰りの会は、ふつうの学級と同じように行います。

授業の進め方は、教科によって違いました。

国語や算数などの主要教科は、基本的に先生ひとりで2つの学年を見ます。補助の職員が入っていれば、学年ごとに2つに分かれることもありました。先生がひとりで見るときは、片方の学年に付いている間、もう片方の学年は自分たちで学習を進めることになります。国の資料では、この2つを「直接指導」「間接指導」と呼んでいます。

複式学級における「直接指導」とは教師が子供たちと直接関わりながら進める指導のことを言います。また、「間接指導」とは一方の学年に教師が直接指導しているとき、他方の学年に学習の進め方を事前に理解させ、子供たちだけで学習を進めさせることを言います。

——文部科学省「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」(平成27年1月27日)脚注より。本文ではこの資料を「国の手引」と呼びます

つまり、複式学級では、先生がいない時間に子どもたちだけで学習を進める時間が生まれます。これは自立につながる面と、教わる時間が薄くなる面の、両方を持っています。

一方、理科や社会は、2つの学年が同じ内容を一緒に学ぶ形でした。「A年度・B年度」方式といって、今年は2つの学年がそろってA年度分の内容を学び、翌年はB年度分を学びます。

この学年の組み方は先生にとって大変そうだ、というのが正直な印象です。国の手引も、複式学級の課題としてこう挙げています。

教員に特別な指導技術が求められる

複数学年分や複数教科分の教材研究・指導準備を行うこととなるため、教員の負担が大きい

——文部科学省「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」(平成27年1月27日)より

「A年度・B年度」で何が起きるか

理科や社会をA年度・B年度に分ける方式では、たとえば3・4年生の複式学級なら、在籍中にどちらの年度の内容から学ぶかが入学のタイミングで変わることがあります。国の手引も、この方式の課題をこう書いています。

単式学級の場合と異なる指導順となる場合、単式学級の学校への転出時等に未習事項が生じるおそれがある

——文部科学省「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」(平成27年1月27日)より

途中で大きな学校へ転校する可能性がある場合は、学習の順番がどうなっているかを、転入前に学校へ確認しておくと安心です。

友だち関係は「固定」される——良く働くときと、つらく働くとき

少人数校のいちばん大きな特徴は、人間関係が変わらないことです。クラス替えはありません。同じ顔ぶれのまま学年が上がっていきます。

これは、良くも悪くも働きます。いい関係でいけるなら、そのままずっと仲良しでいられます。

一方で、私が勤務した学校では、こんな場面もありました。

勤務した学校で見てきたこと

  • 何かトラブルを起こしてしまった子が、あとで変わろうとしても、「前に〇〇をした人」という目で見られ続けることがありました。過去がリセットされにくいのです
  • 子ども同士の関係が、親同士の関係の影響を受ける面もありました。よくも悪くも、です。親戚どうしのつながりが強い土地では、その近さが子どもの関係にも出てきます
  • 役割も固定されがちでした。昔からリーダーだった子がそのままリーダー。逆に言うと、途中からリーダーになるのは難しい雰囲気がありました

国の手引も、学級数が少ない学校の課題としてこう挙げています。

教科等が得意な子供の考えにクラス全体が引っ張られがちとなる

教員と児童生徒との心理的な距離が近くなりすぎる

——文部科学省「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」(平成27年1月27日)より

そのうえで、学級が複数あればできることとして、こう書いています。

クラス替えを契機として児童生徒が意欲を新たにすることができる

——文部科学省「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」(平成27年1月27日)より

裏を返せば、クラス替えという「リセットの機会」がないのが少人数校です。

ただし、同じことが逆に働く場面もあります。「頑張ろう」という気持ちのある子にとっては、変わるチャンスはたくさんあります。 人数が少ないぶん、挑戦できる場そのものが多くあります。少ない中で挑戦できるので、やりやすいのです。国の手引も、小規模校のメリットとしてこう挙げています。

様々な活動において、一人一人がリーダーを務める機会が多くなる

——文部科学省「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」(平成27年1月27日)より

同じ「人間関係が変わらない」ということが、その子の状態によって、支えにもなれば、つらさにもなる。ここが少人数校のいちばんの分かれ目だと思います。

行事は、全員に出番が回ってくる

行事は、少ない人数で回さないといけません。誰かが役職をやることになります。人数の多い学校だったらやらないような子も、やることになります。

これには、良いところと大変なところの両方があります。ふだん前に出ない子にも経験の機会が回ってくる。その一方で、やりたくないけど、やらないといけない場面が出てきます。順番に回ってきて、やりたくないままやらされることもあります。

案内にある「全員が主役になれる」という言葉は、「全員が主役をやらされる」でもある、ということです。これをどう受け取るかは、お子さんの性格によって変わります。

問題が起きたとき、逃げ場が少ない

クラス替えがないので、子ども同士の間で問題が起きたとき、その問題を解決できないと、引きずったまま学年が上がっていきます

勤務した学校で見てきたこと

中学生になってから問題が起きたとき、「小学生のときにこういうことがあった」と、昔の話が持ち出される場面が、実際にありました。

小学校の間に解決しきれなかったことが、何年もあとまで残っていたのです。

大きな学校なら、クラス替えで距離を置くことができます。クラス替えのない学校では、それができません。問題をその場で解決するか、その子が自分から離れるか、という形になりがちです。

これは「少人数校ではいじめが多い」という話ではありません。人数が少ないぶん、大人の目は届きやすいです。そうではなく、一度こじれたときに、時間や距離が解決してくれる余地が小さい、という構造の話です。

だから、もし入学や転入を考えているなら、「トラブルはありますか」と聞くより、「トラブルが起きたとき、学校はどう動きますか」と聞くほうが、実際に役立ちます。逃げ場が少ない環境では、問題への向き合い方がそのまま子どもの毎日に響くからです。

転入してきた子は、どう馴染むのか

山村留学や移住で入ってくる子を、受け入れる側から見てきました。多くの例を見たわけではないので、私の目から見えた傾向として書きます。

馴染んでいったのは、すでに固まっている関係性の中に、自分から入っていける子だったように思います。言いかえると、凝り固まった関係性を、ある意味で壊しにいける子です。

ただ、これは「社交的なら大丈夫」という話とも少し違います。転入先の子どもたちの側にも、新しいものに積極的な子もいれば、ずっと同じ関係の中にいる子もいます。だから、すでにある人間関係をそのままにしておけるか、自分から入っていけるか、気にせずにいられるか——そのあたりが、お子さんによって分かれるところだと思います。

入学前の見学や体験入学があるなら、授業よりも、休み時間の子どもたちの様子を見ておくことをおすすめします。関係のでき方が、いちばんよく見える時間だからです。

中学に上がるとき

私が勤務した学校では、中学に上がるタイミングで、大規模な学校に転校していく子が一定数いました。その前のタイミングで転校していく子も多い印象です(これは体感で、数字で確かめたものではありません)。

大人数の環境への不安は結構持っていて、実際に口にする子もいます。ずっと同じ顔ぶれの中で育ってきた子にとって、学年にいくつも学級がある環境は、想像のつきにくい世界なのだと思います。

小規模特認校や山村留学を考えるときは、その学校の卒業生がどの中学に進むのか、そこは何人規模なのかまで含めて見ておくと、小学校の間だけでなく、その先までの見通しが立てやすくなります。

保護者や地域との距離は、とても近い

私が勤務した学校では、保護者や地域との距離はとても近いものでした。

勤務した学校で見てきたこと

  • 先生も子どもも、地域のまつりに参加します
  • 保護者との飲み会もありました
  • 保護者の方が地域のお店をやっていることもあり、「あのお店に行ったなら、こっちのお店にも行かないと」というようなお付き合いの話を耳にしたこともあります

国の手引にも、小規模校のメリットとしてこうあります。

児童生徒の家庭の状況、地域の教育環境などが把握しやすいため、保護者や地域と連携した効果的な生徒指導ができる

——文部科学省「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」(平成27年1月27日)より

学校と家庭と地域が近いのは、子どもを見守る力としては、たしかに強いです。

ただ、この近さは、そのまま家庭のプライバシーの少なさにもつながります。それから、これは可能性の話ですが、地域で力を持っている人がいるかもしれません。いるとしたら、人間関係が濃いぶん、その人の影響からも距離を取りにくくなります。

移住を考えている方は、学校だけでなく、その地域の人間関係の濃さを自分の家庭が心地よいと感じるかも、あわせて考えることになります。

勉強の面では、どうか

大変な面から書きます。少人数ゆえに、多様な意見は出にくいです。発言力のある一人が言ったら、その方向にクラス全体が引っ張られることもあります。国の手引も、こう挙げています。

児童生徒から多様な発言が引き出しにくく、授業展開に制約が生じる

——文部科学省「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」(平成27年1月27日)より

それから、これは学習面に限らない話ですが、リーダーが固まっているために、「こんな風になりたいけど、〇〇さんがいるから無理か」と、挑戦の前に諦めてしまう場面も見てきました。

それから、専科の先生は少ないです。専門の先生に教科を習う機会は、大きな学校より限られます。

良い面も、はっきりあります。少人数だから、一人ひとりへの支援はしやすいです。どこでつまずいているかが見えるので、その子に合わせて手を打てます。国の手引も、メリットの筆頭にこれを挙げています。

一人一人の学習状況や学習内容の定着状況を的確に把握でき、補充指導や個別指導を含めたきめ細かな指導が行いやすい

——文部科学省「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」(平成27年1月27日)より

そしてもうひとつ。少人数の学校では、子どもがたくさんの大人の目で見守られます。子どもが大人と関わる場面が多いので、大人への対応の仕方を自然と身につけていきます。大人と子どもの距離が近くなるのは、少人数校の良さとして、私がいちばん実感してきたところです。

小規模特認校・山村留学を考えている方へ

ここまでの話は、そのまま小規模特認校山村留学先の学校の話でもあります。

小規模特認校とは、通学区域に関係なく、あらかじめ指定された小規模校に域内のどこからでも通えるようにする仕組みです。国の手引では、学校規模を適正にする手段のひとつとして、こう説明されています。

学校選択制を部分的に導入すること(いわゆる小規模特認校制度)により域内のどこからでもあらかじめ指定する小規模校への通学を可能とすること

——文部科学省「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」(平成27年1月27日)脚注より

制度の枠組みや山村留学との違いは「山村留学・小規模校・移住の違い」で整理しています。

最後に、移住や山村留学を考えている家庭に、教員としてひとつだけ伝えるなら、「これはトレードオフの関係にある」ということです。

地域との近さ。人間関係の固定。人との距離がとても近くなること。大人数だから得られたはずのものが、得られないこともあること。どれも、何かを得るかわりに、何かを手放す関係にあります。

濃い人間関係は、支えにもなり、逃げ場のなさにもなる。この記事で並べてきたのは、結局そのことです。片方だけを選び取ることはできません。

だから、「小規模校は良いか悪いか」という問いには、あまり意味がないと思っています。問いにするなら、「この良い面と大変な面を、うちの子は、うちの家庭は、心地よいと感じられるか」です。

それを確かめる手がかりとして、見学のときに見るところ・聞くことを「学び場を比べるときの確認項目」にまとめています。不登校がきっかけで山村留学を考えはじめた方は「不登校の子でも、山村留学はできる?」も読んでみてください。

この記事の出典

  • 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和33年法律第116号)第3条 e-Gov法令検索(取得日:2026-08-20)
  • 文部科学省「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引~少子化に対応した活力ある学校づくりに向けて~」(平成27年1月27日) 掲載ページ本文PDF(取得日:2026-08-20)

このページの経験談は、筆者が小学校の教員として勤務した学校でのものです。学校によって事情は大きく違います。実際に検討するときは、必ずその学校を見学し、通っている家庭の話を聞いてください。

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